梅雨の候となりましたが、今年はなかなか雨が降りませんね。
一年ぶりに「平野の家 わざ永々棟」のお茶会にうかがいました。
昨年同様、知慮里庵(ちろりあん)社中の懸釜、今日は野点茶会です。
手入れの行き届いたアプローチを通り、待合へ。
床 光悦色紙
「むかしおもふ くさの庵のよるの雨に 涙なそへそ 山郭公」
詠み人 藤原俊成
花入は矢鱈籠(やたらかご)。
花は笹百合、泡盛升麻(あわもりしょうま)、そして京都御苑、厳島神社の
箱根空木(はこねうつぎ)。
この花は白からだんだんと濃いピンク色になってゆくそうで、白とピンクの
二種が入れてあります。清楚な花ですね。
連客の方々に挨拶し、涼しげな露草の絵の汲出し茶碗でお水をいただき喉を
潤し、いよいよ席入りです。
露地草履をはいてお庭へ案内されます。
どんなお席でしょう?
細い露地からお庭へ出ると、畳が敷きつめられ朱傘をさして、野点の茶席にしつらえてあります!
ご亭主が挨拶に出られ、お点前が始まりました。
お菓子が運ばれて。
菓子器はドイツ製カットガラス。
横には虫籠炭斗が煙草盆に見立てられ涼しげに。
京の夏のお菓子らしく葛焼(くずやき)です。
銘をお聞きしましたら、「青田」とつけられた由。
社中の方が自庭の桜で削られた茶杓 銘「早乙女」にも掛けられてのお菓子とお聞きしました。
伏見稲荷大社の田植祭では神楽女が御田舞(おたまい)を舞い、早乙女たちが早苗を植えるのですね。
ガラスの器に盛られた葛焼はまた格別の味です。千本玉寿軒製でした。
今日のお点前は茶箱で、「卯の花点前」という夏の頃のお点前。
茶箱は裏千家十一代玄々斎好みの桑木地。仕組まれたお道具で点前が進められます。
棗もお茶碗も小ぶりで可愛らしく、またそれらを優しく扱いお点前される様子に見入ってしまいました。
そうそう、この金平糖の入った振出し(ふりだし)も茶箱のお道具です。
刷毛目茶碗や木地の茶箱が清々しさを演出しています。
こちらは帆掛け船の絵のお茶碗。
お茶は「風清(ふうせい)の白」(松風園詰)。
二度ほど雨がぱらつき、そのたびに社中の方から傘をさしかけていただいたり、お客方どうし仲良く相合傘に入られたり。それがまた楽しい趣向で、ぱらつくごとに、傘、傘と騒いで社中の傘係さん(?)が傘を手に出てきてくださり、賑やかな席となりました(笑)。
野点席が終わると、広間に通され、虫養いをいただきました。
床 「清風千里夢」の掛物。花入は宗全籠。
お花を教えていただきましたので掲げます。
石斛(せっこく)、小葉髄菜(こばのずいな)、山紫陽花、七段花(しちだんか)、河原撫子。いずれ可憐な花ばかり。
香合はなんとしゃれた意匠の蛇の目傘でした!
その日、雨は時折ぱらつきましたが、午後からは晴れのお天気となりました。
野点の朱傘に、お客方の相合傘、そして広間の蛇の目傘香合…傘もたくさん出番があって喜んでいたのでは?(笑)
この時季の野点茶会。天候も気まぐれです。
備え怠りなく一会を催すのは大変なご苦労でしょう。
おおらかで懐の深い知慮里庵の茶会。
今日も「わざ永々棟」には爽やかな風が吹いているようでした。