現地案内 清遊散歩

八重の逸話と哲学の道散策

春めく季節、京都屈指の散歩道を歩いてみませんか。
歩きながら、つぎつぎに現われる景色や景物にまつわる知られざる京都の歴史
や人物を、ディープな京都案内で定評のある堤勇二講師がお話し、あわせて
大日墓地に眠る新島八重の生涯と逸話を違った角度からご紹介します。

002哲学の道 桜.jpeg

                
哲学の道
橋本関雪.jpeg

          ありし日の橋本関雪

西田幾太郎 歌碑2.jpeg

            西田幾多郎 歌碑

書斎の西田幾多郎.jpeg

            書斎の西田幾多郎

新島先生墓.jpeg

          新島襄 墓

新島八重墓.jpeg
             
         新島八重 墓

P1480702.jpeg
     いわくつきの若王子神社扁額

このご案内は平日、休日の2回実施いたしますのでいずれかをお選びいただき、ご参加下さい。

内容 

 
 晴天時
 銀閣寺前から若王子神社前まで散策。

 雨天時 見返り阿弥陀如来で有名な永観堂をご案内。
実施日時 
 平日 321日(木) 午後1時から午後4時過ぎまで
 休日
 
324日(日) 午後1時から午後4時過ぎまで

集合場所 
 晴天時 白川通今出川東北角
 雨天時
 永観堂表門下

集合時間 
 午後1時 (1時に開始いたしますので、10分前にはお越しください。)

参加費 お一人2000円 実費別途(拝観料or喫茶代など)

 ※リクレーション保険に入りますため、開催日の1週間前までにお申込みくだ  さい。
 ※参加費は、下記までお振込みください。(野外での現金のお受け取りは間違い
  の元となりますため、現地でのお支払いはご遠慮ください)

 ※お申し込みは下記事務局へファックスかメールにてお申し込みください。
  ホームページからもお申し込みいただけます。


京の景色には物語があります。
京の散歩道はインテリジェンスに満ちています。
さあ、皆様とともに知的興奮の散策に出かけましょう!!

       
     京都・清遊の会 事務局
   
       〒603-8341  京都市北区小松原北町13530108

            TEL&FAX 075-465-9096
            E-mail info@kyo-seiyu.net
                            
     京都・清遊の会お振込口座 
        みずほ銀行 出町(でまち)支店(
587
        普通 
1161285 名義 京都 清遊の会

清遊ブログ 春待つ京の…

立春を過ぎましたが、まだまだ寒さはきびしいですね。
皆さまにはいかがお過ごしでしょうか。

さきの節分は好天ともあいまってさまざまに賑やかでした。
前日の二日、千本閻魔堂引接寺(せんぼんえんまどういんじょうじ)へまいりました。節分には「えんま堂大念仏狂言」が行われることで知られています。
閻魔堂お詣り.jpeg
閻魔さん、いつ来てもいかめしく睨みをきかせてはります。
閻魔さん.jpeg
お詣りして、アツアツの「厄除けこんにゃく煮き」をいただきました。

こんにゃく炊き.jpeg

閻魔さまは嘘をつくのを大罪とされ、嘘をつくと舌を抜かれるといいますね。このこんにゃくは舌の形をしています。

こんにゃく、茶.jpeg

こんにゃく.jpeg


それに閻魔さまは裏表のないこんにゃくが大好物なのだそうです。
また、こんにゃくは「来ん、厄」とも「困、厄」とも。


境内の狂言堂には地蔵菩薩、開山の定覚上人、そして小野篁(おののたかむら)が祀られています。

ゑんま堂 狂言堂内部.jpeg

紫式部の供養塔と傍らには普賢象桜も。


供養塔と式部.jpeg
供養塔.jpeg
式部供養の石塔。小さなお地蔵さまがぐるりとめぐり、その上には薬師如来や弥勒菩薩の四座像。

ゑんま堂 普賢象桜1.jpeg
普賢象桜。この桜は茎が長く垂れ下がり、普賢象菩薩の乗る象の鼻に似ているところからの名。
ゑんま堂 普賢象桜.jpeg

ことしも供養塔の横に、こんな普賢象桜のふっくらとした花が見られるでしょうか。

北大路堀川から少し南には式部と小野篁のお墓が隣り合ってあります。
そしてこの寺も式部の供養塔があり、篁像も祀られています。


その昔、小説を書くことは罪深いこととされ、「源氏物語」を書いたかどで地獄に落ちた式部を、小野篁が閻魔大王にとりなして救い、ゆえに二人は一緒に祀られているといいます。
そうそう、堀川の墓所の桜も見事でした。

三日の節分には寺町広小路の廬山寺(ろさんじ)へ。


廬山寺19.jpeg

天気もよく日曜日とも重なって境内は賑やか。「鬼おどり」は3時からのはずですが、ずいぶん前なのにたくさんの人です。


廬山寺1.jpeg


廬山寺は正しくは廬山天台講寺と称し、
圓浄宗(えんじょうしゅう)の本山。
慈恵(じえ)大師良源(りょうげん)が船岡山南麓に開いた與願金剛院(よがんこんごういん)に始まります。廬山寺三世の明導照源(みょうどうしょうげん)上人により廬山寺に統合され、天正年間、秀吉によりこの地に移されました。
宮中の仏事を行う黒戸四ヶ院(くろどしかいん)の一つでもあります。

 


慈恵大師は比叡山延暦寺中興の祖で、正月三日に示寂されたので元三(がんざん)大師とも呼ばれ、角(つの)大師、豆(魔滅)大師、降魔(ごうま)大師などの別称でも知られます。
二本の角を持ち、骨と皮ばかりに痩せさらばえた鬼の像は魔除けの護符として、京都では家々の玄関に貼られているのをよく見かけます。

角大師衝立.JPG

本堂の前ではすでに「鬼のお加持」が行われていました。松明と宝剣を持った鬼さんに、僧侶の真言とともに、身体の悪いところのお加持をしてもらうのです。

鬼のお加持1.JPG

「どこが悪いの?」やさしく聞いてくれているよう。頼もしい鬼のお加持には長い列ができていました。

鬼のお加持2.JPG

 


さて、お加持の鬼さんは退出。
廬山寺3.jpeg
善男善女が見守るなか─

いよいよ追儺式(ついなしき)鬼法楽、通称「鬼おどり」が始まります。


管長以下、僧侶方が入堂、着座され、護摩供養が始まりました。
鬼法楽は、元三大師良源が村上天皇の御代、三百日の護摩供を修せられたときに悪鬼が出現、邪魔をしようとした際に、護摩の法力と大師のもつ独鈷(とっこ)、三鈷(さんこ)の法器により降伏させたという故事によるのだそうです。


鬼が姿を現しました!

廬山寺4.jpeg
たくさんの人のなかからゆっくりやってきます。

廬山寺5.jpeg

 


赤、青、黒。3匹の鬼たちは法螺貝と太鼓の音にあわせ、足を踏み鳴らし、暴れながらやってきました。

廬山寺7.jpeg
廬山寺8.jpeg
廬山寺9.jpeg
本堂に入り、僧侶の護摩供養のまわりをぐるぐる踊り、暴れまわります。

廬山寺10.jpeg
赤鬼は松明と宝剣をもち煙とともに。青鬼は大斧を、黒鬼は大槌を、それぞれ振り上げ振り下ろし、時々カッと睨んで回ります!
廬山寺11.jpeg
赤鬼 式部さんへ.JPG
堂内は松明の煙でもうもうとして、火の粉が飛び散ります。またその鬼の後を雑巾で拭いて回るのですから大変です。

黒鬼 式部さんへ.JPG

ようやく鬼たちが外に出ると、追儺師(ついなし)が東西南北と中央に邪気払いの法弓を放ちました。

廬山寺15.jpeg

廬山寺16.jpeg
そして、蓬莱師はじめ参列の方々から蓬莱豆や福餅が撒かれ、その威力に負かされた鬼たちは退散するという次第。

蓬莱師.jpeg


廬山寺豆撒き.jpeg
豆撒きになると境内はもう人でぎっしり! 立錐の余地もないくらいです。

「鬼がにげます!」というアナウンスで境内はどっと笑いどよめきました。


節分は、明日から季節が変わるというその前日をいいます。

赤・青・黒の鬼は人間の善根を毒する三種の煩悩、貪欲・瞋恚(しんい…怒り)・愚痴を表し、鬼法楽は、この三毒を新しい歳の変わり目といわれる節分に追い払い、福寿増長を祈念、悪厄災難を払い、新しい年を迎える法会なのだそうです。
はじめての鬼法楽は、迫力満点でした。
蓬莱豆.jpeg

福餅.JPG

蓬莱豆と福餅


さて、この廬山寺、かの紫式部の邸宅址で、もともとは式部の曾祖父藤原兼輔(かねすけ)の邸宅があったところとされています。
式部の碑.jpeg
紫式部と娘の大貳三位の歌碑

式部はここで「源氏物語」を執筆していたとも伝わります。


それが今は廬山寺となって、節分に「鬼の法楽」が行われているんですね!
あの世の式部さんもさぞびっくりでしょう。先ほどの光景!…

お邸、大変なことになってますよ! 


いえいえ、式部さんは涼しい顔で極楽浄土から毎年この節分会を見物しておられるのかもしれません()

千本閻魔堂も、ここ廬山寺も式部にゆかりの地で、偶然にも節分に訪れることになりました。

じつは紫式部は小学生の頃、偉人伝かなんぞの本で知って以来ずっと憧れの存在です。

百人一首を覚えてからは、必ず取らねば気がすまない札の十八番が紫式部。


「めぐ…」ときたら、「はいっ!」(笑)
かるた4枚.jpeg

お正月が来ると、式部やきれいなお姫様にまた会えるので、かるた遊びは子供ごころに楽しみでした。

今頃は「源氏物語」も、絵画資料がたくさん出版されていますから、源氏絵を楽しむことも容易になりました。


先日、和菓子司の塩芳軒(しおよしけん)さんで干菓子を求めました。

名前は「雪まろげ」。

雪まろげ.jpeg

 


「源氏物語」朝顔の帖に、雪が降り積もり、月明かりのもと、女童(めのわらわ)たちが雪玉を転ばして戯れ、その光景を光源氏と紫の上が眺めるシーンがあります。
「雪まろばし」とか「雪まろげ」という雪遊びであったようです。

土佐光起 源氏物語画帖 雪まろばし2.jpeg

       土佐光起筆 「源氏物語画帖」より


そんな雪玉を想わせる雪のようなお菓子。上品な和三盆が口の中で溶けてゆきます。
ずっと長くつくられてきたお菓子だそうですが、知らなかったのです。


他には「ふくべ、梅鶴(ばいかく)」が時候にかなうかも。
なんとはなしに風雅で、春の気分が浮き立つようで。梅鶴は梅風味。ふくべは黒砂糖入りの羊羹をすこし乾かしたような感触です。
ふくべ.jpeg
どちらも手のひらにのる小箱を求めました。雪まろげも、ふくべも梅鶴も繊細な干菓子です。


塩芳軒さんは、風格あるのれんに気圧されて、入るのに勇気がいりましたが、一足お店に入るとそんな心配は吹っ飛びました。
塩芳軒.jpeg
秀吉の建てた聚楽第址近くにあり、「聚楽」饅頭も知られます。


式部といえば紫つながりでしょうか、式部のお墓の近くにある紫野源水さんにも「式部せんべい」がありました。

紫野源水 表構え.JPG

ぱりぱりと食べてしまうのが惜しいような贅沢なおせんべい。

式部せんべい.jpeg


どうしてか、またお菓子のご紹介になってしまいました()…。

寒い中にも楽しみを見つけて過ごすうち、じきに春。


辛抱して春待つ京の節分会。
エネルギーはもう町に充満しています。

白梅.jpeg