等持院を訪ねて

京都・清遊の会 現地案内

等持院 拝観

 8月29日(日)、堤講師の案内で、足利家の菩提寺・等持院を訪ねました。

 まだ真夏のような陽ざしの残る日でしたが、境内に一歩足を踏み入れると、しんと静まり、静寂の世界です。廊下を伝い、関牧翁老師の達磨像を拝して方丈へ。ここ等持院の鴬張りの廊下は本当に美しい音色がします。
 妙心寺から移された本堂。まさかお寺に男女和合の像があるとは知りませんでした。白砂と緑苔、二色の対比が美しいお庭を前に、等持院の歴史を学びます。尊氏逆賊説と朱子学の関係、真如寺と同じ山号の由来など。盛りだくさん過ぎて覚え切れません。汗、汗(笑)

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白砂と苔の配色が美しい方丈前のお庭


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六間取り形式の方丈 ここに聖天像が

 霊光殿へ。正面中央にご本尊の地蔵像。左右に達磨大師と夢窓疎石像。そして徳川家康像。足利家初代尊氏から15代義昭まで歴代の像十三体が並び、一人ひとりの像について詳しい説明がありました。それぞれの事績や、性格、特徴を聴きながら対峙していると、ここはやはりただならぬ雰囲気が感じられます。

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                霊光殿外観 

 霊光殿を出て、西庭を観賞。堤講師にご用意頂いた「都林泉名勝図会」と現在の庭を見比べてみます。芙蓉池に架かる橋や植栽までがほぼ同じです。

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                    方丈裏からの西庭

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                      書院からの西庭の眺め

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          都林泉名勝図会に描かれた等持院の西庭 

 書院で、かつてあった霊光殿天井の龍の絵の写真を見たり、お庭の解説を聞きます。ここでも名勝図会のイラストが大活躍。その後、降りて散策です。
 清漣亭は足利義政好みの茶室。室床と楊枝柱、櫛形窓、座る人の立場に応じた天井の造り、そして司馬温公の手水鉢など興味は尽きません。ですが、何よりも藁屋根茶室の簡素で鄙びた風情と義政の事跡、結びつきません!? (笑)。
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                 茶室青漣亭と等持院型石灯籠

 寄せ燈籠の斜面を降りると大きな有楽椿。これは有楽椿と称する椿のうち、現存最大だそうです。風格を感じさせますね。
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                   風格を感じる有楽椿

 等持院中興、関牧翁老師の胸像を経て足利歴代将軍の遺髪を納めてあるという足利家十五代供養塔、十三重の石塔です。
 その両側には東側に小豆島で生まれ京都で没した天才俳画家、赤松柳史の句碑「煩悩はたえず南瓜を両断す」と、西側にはその高弟・青山柳為の句碑「芙蓉池に風あるやなし落花舞う」の句碑。流麗な文字に思わず足を止め、見入ってしまいます。


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                   流麗な筆跡の青山柳為句碑

 堤講師から庭歩きの楽しみ方を聞きながら、それぞれに石段や踏み石の景色をたのしみ、東庭にすすみます。
 かつて真如寺の敷地だったという庭で驚きの話を聞きました。ここは西庭とはまた趣を異にし、幽邃な雰囲気がただよいます。いつのまにかまるで別世界に足を踏み入れたかのような空間。東庭は心字池の回りをぐるりと巡っての散策です。
 池中の島には昭和25年のジェーン台風で倒壊した楼閣、妙音閣がありました。鹿苑寺、慈照寺、真如寺は相国寺の山外塔頭。鹿苑寺には金閣、慈照寺には銀閣、そして真如寺には妙音閣。妙音は極楽に棲むという妙音鳥、迦陵頻迦。三庭とも神仙思想に基づきます。堤講師の話は史実と想像の世界を自在に行き来し、考えること、思いをめぐらすことの素晴らしさを教えてくれます。

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        妙音閣址の礎石を前に、自在に語る堤講師
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       東庭の風情 西芳寺の黄金地とよく似てます

 木漏れ日がさし、水面がゆらぎ、すすむたび新たな景色が広がる不思議さに、ただただ感激しながら歩きます。そして立ち止まることの大事さ、振り返ることの大切さを実感しました。

 足利尊氏墓には「等持院殿贈大相国一品仁山大居士」の碑銘が。尊氏の仁、直義の智。仁者は山を楽しみ、智者は水を楽しむ……。
 それにしても三条京阪の土下座の像としか知らなかった人が、この墓を鞭で打ち据えたとは! 

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            高山彦九郎が鞭で打ち据えた尊氏墓石 

 名残惜しい等持院を出て、隣接する広い墓地に眠るたくさんの画家や映画人の話を聞きながら「日本映画の父」マキノ省三像の下へ。昔ある映画の撮影に立ち会うため太秦に日参し、映画撮影の現場と裏表を体感された堤講師の話は、臨場感たっぷりです。
 日本初の寺内撮影所、等持院撮影所や、ここに続く天授ヶ丘撮影所の歴史とそこで育った時代劇の大スターたちの話、興味深々です。折りしも本日(9月1日)の新聞が京都の時代劇撮影を支えた「映像京都」の解散を伝えていました。堤講師が撮影に立ち会われた映画「利休」もこの映像京都の仕事だったそうです。

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           日本映画の父・マキノ省三像。脚本を手に

六請神社

 等持院を出た一行は隣の六請神社に。
 かつて葬送地であった衣笠山の名称の由来が、死者に掛ける絹掛けからきているという説、この地を開いた開拓者たちの崇敬する神が天照国照神であったことから、天照大神信仰と結びつき、さらに死者の救済にあたる地蔵信仰と六地蔵の六がつながって、京奈一円の古社である伊勢・賀茂・石清水・松尾・伏見・春日の六社を勧請、現在の神社となったこと、同じ性格をもつ敷地神社(わら天神)の「六勝神社」が「勝」の字を持つこと、民俗学的に極めて興味深い性格をもつ神社であることなどを学びました。

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                           六請神社外観 
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                        見事な流造の本殿 
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                 石に願いを。力石神社のご神体 


真如寺
 六請神社に隣接する相国寺の山外塔頭です。中には入れませんが、鉄柵越しにみるエントランスのなんと素敵なこと。

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                趣きのある真如寺のエントランス 

 女性で始めて悟りの印可証明を得た無外如大禅尼が師の爪と遺髪を納めた正脈庵から、高師直が大寺となした経緯、人形寺で知られる宝鏡寺の歴代門跡が眠る地でもあることなど、とても長く深い歴史があることを知りました。
 六請神社もそうですが、こうした機会に紹介されなければ、おそらく何度前を通ってもまず立ち寄ることのない地域の社寺がとても身近に感じられます。これこそが「清遊の会」の京都案内。生きた観光がここにあります。

第2回京都おもしろ講座

 
第2回 京都おもしろ講座と社寺拝観 

 8月8日、第2回目のおもしろ講座のテーマは「言霊の世界」でした。
 なにやら夏に涼しそうなテーマ、と思っていたらとんでもない! 話の中身は驚きの連続! 和歌の世界に表れた言霊の例や、とくに面白かった「夕占問」の話。食事の話や野球の話、蓮舫大臣の仕分け秘話まで飛び出し、まったく日常の話題の中に登場する言霊の数々にあっと言う間の二時間。まだまだ聞いていたかったのに残念な時間切れとなりました。本当に堤講師の話は何を聞いても目からウロコの連続です。

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                             おもしろ講座風景

社寺拝観 大報恩寺と石像寺
 講座に続き、午後はお盆にちなんで大報恩寺の六道参りを兼ね、素晴らしい建築と仏像の鑑賞会が行われました。
 話は千本釈迦堂の異名の由来や国宝建造物の特長や見どころ、押さえどころの話から始まりました。

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                純和様の簡素で優美な大報恩寺壁面
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全国から寄せられたおかめ像の前で阿亀、於多福、天鈿女と
話は自在に展開します。

 おかめさんの意外な話を伺って、一同は本堂へ。

 昔は六観音との結縁を行っていましたが、現在はご本尊釈迦如来像との結縁です。
 国宝本堂や厨子、天蓋などの素晴らしい説明を聞いて一同堪能。いつもながら堤講師の話は単なる建築や歴史の話に終わりません。

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                    本堂 六道詣り ご本尊と結縁
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   生々しい応仁の乱の傷跡が残る外陣の柱

 そして圧巻の仏像群が安置されている霊宝館へ。
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             鬼瓦ならぬ阿亀瓦に守られた霊宝館

 北野天満宮の神宮寺としての歴史や事物の説明を受け、待望の六観音像と対面です。女人の願に応えて造られた、この素晴らしい仏と向き合う創建当時のままの釈迦十大弟子たち。そして菅原道真自刻と伝える千手観音。仏像とは見るものではなく、向き合うもの、感じるもの。
 造仏、仏を造るとはなんなのか。鳥肌がたつような説明です。本当に「他では聞けない、とっておきの京都案内」の看板に偽りはありません。一人でも多くの方にこの説明を聞いて頂きたいと、心から思いました。

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     肥後別当定慶作 六観音のうち如意輪観音像
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            伝菅原道真作 千手観音像
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       快慶作 十大弟子のうち目けん連像

 創建時からまったく変わらぬ境内には多くの寄進物や供養塔があります。愛嬌ある布袋さんの像には思わず顔がほころびました。
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                境内片隅に立つ温顔の布袋さん

 名残惜しい釈迦堂を後にした一行は、五辻通を東に、石像寺へと向かいました。途中、食べ損ねたカレーの話をされる堤講師。本当に残念そうでした(笑)
 石像寺の前で、驚きのご本尊をもつ別のお寺の話を聞いたあと、いよいよ境内へ。冷たいお茶の接待に一同、感謝、感謝です。

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                               石像寺 本堂
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                      石像寺 石造阿弥陀三尊像

 庶民信仰に支えられ、それに歴代のご住職が応えて何百年という時を超えてきたお寺ならでは、観光寺院と違う香煙に包まれた境内に心癒されます。京洛屈指の石造阿弥陀三尊像を拝し、今もこんこんと湧き続ける弘法水を見学して今回の見学会は終了です。
 来月のおもしろ講座は「暦の話」と「京都国宝秘話」、どんな話になるのかいまからワクワクドキドキです。平日ですが、どうぞ皆様お誘いあわせのうえ、ご参加下さい。