清遊ブログ  重陽のころ 琥珀の菓子など

九月に入り、あざやかな百日紅ばかりが目立っていた町中にもようやく萩の花など咲き始めました。
秋の到来が待たれる頃。

七日は暦では白露。九日は重陽(ちょうよう)。そして十日は二百二十日。稲の開花期ゆえ台風に警戒する頃だそうです。

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  こんな案山子に会いました! 広沢の池近くで。


ただ暦ではすっかり秋でも、九月の京都ときたら! 今日も予想気温は35℃となっていました。

このような時季、遠方の友人に持参するのに、はて、お菓子はなににしようかと迷いました。いただきたいお菓子、差し上げたいお菓子は何でしょう?


夏の棹物はもはや晩夏の気分にそぐわず、お饅頭や羊羹を味わうにはまだ早すぎます。
思いついた、というより思い出したのは「琥珀(こはく)」のお菓子。


早速、永楽屋さんへ向かいました。


本店は四条河原町の目印ともなるくらいですので皆さまよくご存じと思います。

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永楽屋さんといえば、「一と口椎茸」の佃煮で有名ですが、辛いものと甘いものの両方を製造販売しているお店としても知られています。


今日は、室町通り蛸薬師にある室町店のほうへ伺いました。

こちらも大きなお店です。広い間口のひんやりした店内へ。

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ありました!(笑) 

琥珀のお菓子がいろいろ。「柚子(ゆず)」に「橙(だいだい)」。それから「重陽」も。
琥珀は、寒天を使った錦玉(きんぎょく)をクチナシや和三盆で琥珀色に染めたものをいうことが多いのですが、永楽屋さんの「琥珀」といえば、寒天と砂糖でつくられたお菓子のことをいいます。
これこれ。以前はこの「柚子」をよく手土産にしていました。

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柚子の皮が入っているのが透けてごらんいただけるでしょうか。
柚子は、こだわりの徳島県木頭(きとう)村の柚子。


一口噛むと、外のコーティングされた砂糖がパリンと割れて、中のやわらかな寒天と柚子とが口の中で溶け合います。
柚子のさわやかなほろ苦さ、やさしい甘味は暑さ疲れの体をいたわってくれるようです。

暑い時分には先に少し冷やしてからいただくと、よりさわやか。
それにこの宝石のようなお菓子のかわいらしさにも和みます。

「柚子」や「橙」のこの一番小さい12個入りは手のひらサイズ。

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お菓子そのものはもちろん、包装にいたるまで上品。
きっちり入っていますから持ち運びにとてもいいのです。

ほかに「柚子」に粉糖を掛けた「柚子こゞり」もあり、これは抹茶に合いそうでした。
下の「橙」はグレープフルーツ。ほろ苦さのほうが勝ります。
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「重陽」は抹茶、小豆、紫蘇の三種。

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菊花をかたどり、気品が感じられるお菓子。それぞれの風味が主張しすぎない控えめな味。

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まだ蒸し暑い京の時候にぴったりの半生菓子ですが、他にも「栗」が、さらに秋になると、林檎風味の「紅玉」もできる由。紅玉なら甘酸っぱい味なのでしょうか。

室町店の齋田さんにお話をうかがってみると、「琥珀」は、製造過程でひびが入ることなどが多く、商品として完成、販売にいたるまでに非常にご苦労されたそうです。
なるほど、まさに完成されたお菓子だと感じる所以です。
室町通りは車の往来もひっきりなしですが、一足踏み入れるとほっこりして、落ち着いた佇まいのお店でした。

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重陽のことをすこし─
重陽とは最も大きい陽の数が重なる日。すなわち陽の気が極まり強すぎて人に厄をもたらすため、災いを払う日として節句とされたといいます。
重陽の節句は宮中の年中行事(ねんじゅうぎょうじ)で、前日から菊に真綿を被せ、菊の香りと露を綿に移す「菊の着せ綿」が行われました。
菊の節句に邪気を払い、長寿を願って菊酒を飲み、菊を飾ったのですね。


現在、上賀茂神社では重陽の日、古式にのっとり、烏相撲が行われています。

上賀茂神社の御祭神は賀茂別雷大神(カモワケイカヅチノオオカミ)。
その昔、カモの神様が八咫烏(やたがらす)の姿となって神武天皇の東征を助けたとのいわれから、カモ社は烏と深いつながりを持って知られます。
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禰宜方(ねぎかた)が「かあかあ」と鳴き、祝方(ほうりかた)は「こうこう」と鳴き…こうした烏神事のあとに相撲童子の取り組みが始まります。


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相撲は子供たちが一生懸命で、見ている方も応援したくなるほど。
見物客も大勢で、勝ち負けが決まるごとにおおきな歓声があがります。


相撲の歴史をひもときますと─

建御雷神(タケミカヅチノカミ)と、父・大国主命の国譲りに異を唱えた建御名方神(タケミナカタノカミ)が対決した神々の相撲。建御雷神の圧勝で、負けた建御名方神は諏訪まで逃れ、諏訪大社に祀られたという話。


また野見宿禰(ノミノスクネ)と當麻蹶速(タイマノケハヤ)の人間同士の相撲も知られています。野見宿禰が勝ち、當麻蹶速を蹴殺(しゅうさつ)したと伝わります。前後のお話は堤先生から折に触れて講座でお聴きになったことと思います。

奈良・平安時代には「相撲節会(すまいのせちえ)」としての宮中の年中行事があり、力を奉納する神事でした。
さて、豆力士の取り組みが済むと、菊酒の振舞いがあります。

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美しい菊酒ですね。でも一杯だけです(笑)。

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さて、上賀茂神社を出て、賀茂川を向かいへ渡り、少し北に行きますと西賀茂になりますが、「霜月(そうげつ)」さんがあります。
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今の時季に作られている「琥珀」は二種。


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赤紫蘇を混ぜ込み、上に花紫蘇をあしらった「花紫蘇(はなしそ)」

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「柚子蓼(ゆずたで)」はまだ青い柚子を混ぜ込み、蓼をのせて天然塩をかけてあります。
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どちらもユニークな意匠で、どんな器に盛ろうかなど愉しみたくなります。
霜月さんは家族で営んでおられ、手作り感のあるお店でした。

来月はまた時季にかなった「琥珀」が登場するようです。

あと幾日で九月も中旬。夜になると虫の声も聞えてきます。
じきにお彼岸、名月…。また秋が一足近づいてくることでしょう。
それではまた。
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           妙顕寺の秋明菊(2011年秋)





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