世界遺産 仁和寺現地案内報告

2月26日、予てより楽しみにしていました
京都・清遊の会の「世界遺産現地案内」
第一回の仁和寺訪問を行いました。

朝のうちは冷え込んでいましたが、快晴!
古寺の伽藍が青空に映えて、それは見事でした。
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快晴の空の下、伽藍の佇まいがひときわ映えます。

午前10時20分、二王門下に集合した参加者は
その大きさや筋骨隆々の二王像、裏の狛犬と狛獅子
一層と二層でほぼ変わらない広さの屋根復古和様
最高の寺格を誇る名刹の堂々たる佇まいを肌で感じました。
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京都有数の二王像。迫力あります!
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復古和様、逓減率が変わらない重層屋根、見事です。

一行は境内の済信塚へ。
こんなところに集まって何を見てるの? という
他の観光客の視線を感じつつ(笑)
父・雅信、姉・倫子、道長の栄華、
そして仁和寺の興りへと、話はハードです。
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普通なら見過ごします。でも聞けば納得。重要史跡でした。

華道の家元でもある仁和寺を象徴する
大仏師長田晴山の佳作金剛華菩薩像など
普段はあまり気に留めないものながら
一つ一つの重要さを改めて学びました。
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金剛華菩薩像。よく見れば素晴らしい仏像です。

通常のコースとは違う道順で
一行は黒門から五重塔
木立の中に見え隠れする塔身の素晴らしさ
二王門と同じく逓減率の低さを目で確認
屋根を支える天邪鬼、一箇所だけ違う龍瓦
見どころは満載です。
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景色に溶け込んだ塔身、柔らかな姿です。
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東南隅の龍瓦。天邪鬼とともに見過ごすと残念です。

そして隣の九所明神社へ。
東西文化の交錯地点である仁和寺の歴史を象徴するのがここ。
京都を守護する神々が一堂に会し、
慶長21年彫銘のキリシタン灯籠が厳かです。
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広い境内の中でも独特の雰囲気を持つ九所明神社。
三基のキリシタン灯籠がその存在を示します。
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拝殿前で解説を聞く一行。実物を見るって大事です。

すぐ横にある階段を使わず
崖のような(!)坂道を登って経蔵へ。
まったくこの講師の案内は油断も隙もありません(笑)
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ああ、歩きにくい! でも不思議に胸が高鳴ります。

境内の中で最も高台にある一郭。
経蔵、金堂、鐘楼、御影堂
巨刹仁和寺の中枢です。
それぞれの建物の特徴や仏像の解説
中には入れませんが、わかりやすい説明です。
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境内のもっとも高い一郭。密教寺院仁和寺の中枢です。
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現存最古の紫宸殿遺構、金堂。存在感がありますね。

水掛不動尊、菅公腰掛石、閼伽井
興味深い逸話の連続で、講師の話を聞いていると
まるで本当に目の前の石に道真公が腰掛けているような
そんな錯覚が起きるから不思議です。
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話を聞くうち、不動明王が道真公に見えてきます。

御影堂の清涼殿古材を使った蝉の金具を見たり
堂内の厳かな雰囲気を味わった一行は
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優美な印象を残す、清涼殿古材で建てられた御影堂。
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ここにもある蝉の金具。女人の美しさは儚いものなのです。

一旦境内を出て、成就山八十八ヶ所霊場
少しだけですが、札所巡りの気分を共有します。

再び境内に戻った一行は
大黒堂から観音堂へ。
伝法灌頂という密教の秘儀、
屋根の上の贔屓という生き物
この講師にはおなじみですが
興味尽きないお話です。
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たちが高く、不安定ながら重要な建物、観音殿。

御室桜に囲まれて建つ
五重塔の雅姿を見ながら小休止。
仁和寺の寺名の秘密、二王門と書く理由など
面白く、ためになる話をうかがった後は
中門の妻飾りの解説、硬軟取り混ぜての話は
ついていくのが大変です(汗、汗……)
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珍しい二重虹梁の蟇股。難しいけど見れば納得。

二王門、中門、金堂と、
次第に地勢を上げていく境内の中で
御室の名に相応しい雰囲気を見せるのが
筋塀と松に囲まれたこの中門下の一郭。
御所の風情満点です。
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筋塀と松に囲まれた中門。まさに御室の語感そのままです。

その風情を象徴するのが勅使門
建築というより彫刻ですね、と講師。
まさにその通り。
日本建築史に一時代を画した亀岡末吉の力作です。
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隅々まで埋め尽くされた精巧な細工。感嘆。

お昼の休憩をはさんで、再び合流した一行は
御室の中心、御殿へ。
亀岡末吉、塩野庄四郎、安田時秀と
近代京都の建築をリードした人たちの仕事を
詳しい解説とともに堪能しました。

白書院の拓本や扁額の話などは
まったく他では聞けない、清遊の会ならではです。
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李白の筆「壮観」の拓本。面白いお話です。
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「功参造化」の扁額。日清戦争を巡る驚きのお話でした。

宸殿の南と北でガラリと趣きを変える仕掛けの秘密
釣殿の意味と価値、南庭と北庭の違い
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宸殿の南側(上)と北側(下) 同じ建物の両側面、この違い
話を聞かないとわかりませんね。なるほど。
寝殿造の庭と書院造の庭、なるほど、なるほど。

宸殿の障壁画帳台構の意匠、床框の螺鈿細工などなど
次から次へと素晴らしい文化財の解説、驚きの連続です。
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帳台構に描かれた孔雀。仁和寺における孔雀とは?

霊明殿に至る廻廊の地勢を利用した軽快な全体構想、
途中に設けられた腰掛の華奢で優美な姿、
古今の建築を知り尽くした亀岡式の魅力満載です。
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全体にめぐらされた廻廊の妙味、腰掛の魅力、圧巻です。

霊明殿で終戦秘話を拝聴し、
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近衛文麿筆の扁額。目からウロコの終戦秘話。

高台から御殿全体を見渡すと、
建物と庭との関係があらためて身に沁みます。
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霊明殿から見た北庭と宸殿。建物と庭の関係が見事です。

黒書院の堂本印象や、白書院の福永晴帆の襖絵
もう一度、御殿全体を巡り直した一行は
近代と古代が交錯する御殿の建物に
復古王朝の余韻を残しつつ御殿を後にし
少し時間があるため
賛成多数で双ヶ丘山頂へと向かいました。
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双ヶ丘、一の丘山頂。疲れた足に鞭打って登りました。

海抜は低いながら、一日広い境内を巡った後の
思ったよりハードな山道を
喘ぎながら登り山頂へ。

しかし登って良かった!
山頂からみる仁和寺の全景は見事の一言。
疲れを忘れ、しばし景色に見入りました。
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この絶景! 苦労して登ってよかった! 素直な感想です。

山上古墳や秦氏豪族の墳墓址などの話をうかがい
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双ヶ丘山頂の一号墳墓。迫力ありました。

たくさんの思い出を残して
一行は丘を降り、解散しました。
本当に一日、お疲れ様でした。

清遊の会は引き続き京都の世界遺産の解説と
現地案内を行ってまいります。
是非、お一人でも多くのご参加を
心よりお待ち申し上げます。

京都・清遊の会 12月 おもしろ講座と現地案内報告

12月の清遊の会は、おもしろ講座と現地案内1日だけでした。
おもしろ講座は来年の大河ドラマにあわせ
「お江と戦国の女性たち」
がテーマでした。
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54年の生涯を生きた崇源院、お江。
将軍正室で将軍の生母となったのはお江だけです。

お江とは
信長を伯父に
秀吉を義兄に
家康を義父にもつ
戦国時代きってのセレブ
夫は二代将軍
子は三代将軍
娘は天皇中宮
孫は天皇
というとんでもない女性
絶世の美女を母にもつ三姉妹の末っ子は
父を知らずに育ちます。
長姉・茶々(淀)

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秀吉の側室となり、鶴松、秀頼を生んだことになっている茶々
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父・浅井の主家である京極家に嫁ぎ
三姉妹中もっとも長寿を保ち
慕われ続けた次女・初、常高院
権力者たちの野望にさらされ
時代の波に翻弄されつつも、
多くの子宝に恵まれて、
天皇の祖母ともなったお江
その数奇な生涯と
来年多くの人が訪れるであろう
京都におけるお江の遺跡やゆかりの場所
について大変興味深い話を聞きました。
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茶々によって建立され、お江によって再興された養源院。
このお寺にはお江の想いがいっぱい詰まっています。

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養源院玄関。葵の御紋が目を惹きます。
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養源院の襖絵。琳派の祖となった俵屋宗達の松図。
権力者の居室を飾った永徳とも探幽とも違う、
踊るような松に、お江の想いが重なります。

加えてあまり知られていない
三姉妹の次女初の養女となった古奈姫ゆかりの
三寶寺など、興味津々でした。
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鳴滝の三寶寺は古奈姫ゆかりの古刹。
姫が寄進した淀殿・秀頼・国松丸の供養塔。意外な歴史に
驚きの連続です。

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画像をふんだんに使って、とてもわかりやすいお話でした。
講師の話は京極竜子に醍醐の花見と
次から次へと展開し、春日局や篤姫まで
とても楽しく、来年の大河ドラマが待ち遠しくなりました。
現地案内 黒谷訪問
午後からは場所をお江ゆかりの
黒谷金戒光明寺にうつして現地案内です。
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法然上人ゆかりの「白河禅房」の地を示す瓦
城壁のような石壁の説明を受けたのち
一行は禅宗建築の遺構を示す山門へ
珍しい扁額の意味を学びました。
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浄土宗四ヶ本山の山門に「浄土真宗最初門」の後小松天皇扁額。
気づかずに通り過ぎるのはもったいなさ過ぎます。

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天沼俊一教授による御影堂「大殿」。
最高の音響効果と、採光効果を備えた昭和の名建築です。

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元の経堂がお骨を納めた骨大師に変わっていました。
堂内には法然ゆかりの二十五霊場のお砂が配され
お砂踏みができるようになっています。

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本堂・阿弥陀堂の本尊と天井画。
源信最後の造仏で、「のみ納め如来」の名が。

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大方丈前で説明を聞く参加者

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当寺はかつての会津藩本陣あと。
本陣の名残を見せる建物です。

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春日局によって寄進された極楽橋。もとは木橋。
今は新しくなっていますが、局のお江に寄せる思いが伝わります。

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春日局によって建立されたお江の供養塔。
その巨大さと、塔の入り口を守る自分の塔
そしてお江の横にならぶお江が溺愛した
徳川忠長の供養塔の位置関係が
愛憎を超えた時の浄化を思わせます。

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忠長の供養塔と並ぶお江の塔
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お江と忠長親子の塔を守るように
二人の塔の入り口に建つ春日局供養塔。

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法然上人の遺骨を納めた御廟。
黒谷を訪れる人の一体何人がこの御廟や
すぐ下の蓮池院(熊谷堂)をお参りするでしょうか。
本当に清遊の会ならではの案内です。
手前の五輪塔は敦盛の供養塔。

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法然上人御廟内部。
お厨子の中に勢至菩薩像。
その下には上人の遺骨の上にたつ五輪塔が納められています。

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塔頭西雲院境内
ここでは朝鮮通信使の話を聞きました。
この塔頭の初代住職宗巌師の話、
秀吉の蛮行の意味と通信使の使命……
圧巻の説明です。
この塔頭に法然の貴重な遺跡「紫雲石」
がある意味がわかりました。
上は中国人医師王けん南の墓。
琳派ゆかりの人物でもあります。

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会津墓地入り口
会津藩が神道であることも初めて知りました。

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お江の夫、二代将軍秀忠寄進の三重塔。
日本三文殊の一つ。
本尊の渡海文殊像は御影堂に安置。

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三重塔からみる夕日。
西方浄土を願って、この夕日を見ながら行う「日想観」は
かつて大変な人気だったそう。
入日の中に浄土を観想する、擬似体験ながら
とても有意義な締めくくりでした。

このほかにも予定外に真如堂を訪れたり
黒谷墓地に眠るたくさんの有名人の
話を聞いたり、盛りだくさんの一日でした。
午前のおもしろ講座に続いて参加された方々も
午後からの現地講座のみ参加された方々も
本当にお疲れ様でした。
お楽しみいただけたでしょうか?
清遊の会は、来年以降もためになる講座や
現地案内を行ってまいります。
一人でも多くの方にご参加頂けますよう
心よりお待ち申し上げております。
皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さいませ。