2010年10月19日 おだやかな秋の一日、京都御苑・拾翠亭において「和菓子の会」を開催、続いて京都の公家文化の話を聞き、御苑内の厳島神社や宗像神社に鎮座する観光神社などの散策を行いました。
旧九条家茶室・拾翠亭は、江戸時代の公家茶室遺構として残される貴重な建物。
翡翠(かわせみ)の緑(翠)を拾い集める意の席名らしく、開け放した窓から緑の爽風が吹き渡ります。
第一部「和菓子の会」は和菓子研究家の井上由理子先生から、目で楽しみ、耳で学び、口で味わう京菓子の醍醐味を教わりました。
以下、何枚かの写真とともに情景を追います。
九条池に面した拾翠亭一階広間にて
井上先生から和菓子の歴史についてお話を聞きました。
開け放った縁側から高倉橋を望む風景。
聞こえるのは風のそよぎと鳥のさえずりのみ。
不老長寿の仙薬をもとめて黄泉国に渡った
菓祖「田島間守命(たじまもりのみこと)」。
手にはお菓子の起源とされる「非時香菓
(ときじくのかぐのこのみ)」を持ちます。
唐菓子の一つ「歓喜団」(清浄歓喜団)
同じく唐菓子の一つ「索餅(さくべい)」(再現)
茶の湯創生期から用いられた菓子の一つである「昆布」
南蛮菓子の一つ「コンペイ」
南蛮菓子の一つ「ホウル」
秋の干菓子いろいろ
南蛮菓子の一つ「アリヘイ」が進化した有平糖
最も古い和菓子の製菓書「古今名物御前菓子秘伝抄」
「京菓子講座」(昭和33年刊)
お話のさいごにお抹茶で秋の主菓子をいただきました。
秋桜、萩、まさり草、光琳菊、栗、紅葉などとりどりの意匠。
第二部は二階に場所を移し、堤講師から、京の公家文化についてお話を聞きました。
九条家は近衛家に次ぐ五摂家の名家。
摂家とは摂政・関白を出すことができる家格をもつ公家のことです。
二階で現代にまで続く公家の歴史や
京の祭事に生きる公家の影響を学んだあと、
亭内の建物の説明を聞きます。
パンフレットに書かれているようなことはパンフレットを読んでください、
と話は自在な展開を見せ、池に突き出した縁側の榑縁(くれえん)と切り目縁の違い、
そしてその縁の下の意外な世界……。
本当に目からウロコの連続です。
榑縁の縁側と欄干の意匠、
下ろされた御簾の高さと座る文化の視点の交点。
絶妙のバランスが光ります。
縁下に広がる荒磯の景。そのこころとは?
さらに一同、建物を出て腰掛待合の演出などを聞き、亭外へ。
様々な仕掛けが施された腰掛待合。
聞かないとわかりません。
勧請された厳島神社や、御苑内に鎮座する宗像神社などを見学しました。
おなじみ珍鳥居。
しかし、鳥居だけではなく神社の説明が大事です。
宗像神社内に鎮座する観光神社。
観光王国京都ならではの由緒は見逃せません。
講師が用意された幕末の京都御所公家屋敷配置図とともに巡る京都御苑散策。
本当にわかりやすい説明で一堂満足の二時間でした。