京都世界遺産現地案内会「宇治上神社界隈を歩く」


3月21日、祝日の月曜、
京都・清遊の会主催の世界遺産現地案内
「宇治上神社界隈を歩く」を行いました。
前日から降り出した雨が心配されましたが、
当日朝、京阪電車が宇治駅に到着する頃には
ほとんど雨は上がっていました。
さすが清遊の会、みんなの気持ちが通じたのか
雨天の予報でも降らないんですね。
さて、参加のみなさんが駅前に集合され出発です。

まずは莵道稚郎子の墓とされている
通称宇治墓にむかいます。

ここはこんもりとした円丘状になっていてきれいに整備されていますが、林の中から聞こえる鷺の鳴き声がちょっと気味悪いところ。
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      菟道稚郎子の墓と比定された宇治川畔の宇治墓

なぜここが莵道稚郎子の墓とされたのか? 
みなさん、熱心に堤講師の説明に耳を傾けられています。
話を聞くほど驚きの内容。
「山上に葬る」と記録に書かれるにも関わらず、川の側に、
しかももともと墓ですらない土盛りを、
わざわざ成形し直して体裁を整えたのが現在の宇治墓……。
不気味な鳥の鳴き声はその叫びかも!? 
しかし曲がりなりにも指定御陵を目近に見学できて
それはそれで楽しいひと時でした。

続いて太閤堤の話。
豊臣秀吉が文禄三年(1594)に伏見城を築いた際、
宇治川に作った大堤防の跡です。
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             出来立てホヤホヤの史跡太閤堤石碑。

ちょうどこの宇治墓に添って発掘され、
見学会が行われました。
いま立っているところがそうなんです。
もう埋め戻されて見ることはできませんが。

川堤には茶園が広がっていました。
寒冷紗という覆いが見えます。
ここで足を止めて堤講師から宇治茶の話を聴きました。
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史跡太閤堤の真上に、宇治川の朝霧をたっぷり吸って育つ
宇治茶の覆下栽培風景。

これは覆下茶園といって宇治独特の製茶風景です。
いまは広く行われていますが、この宇治が発祥。
本来は葭簀を張り、
抹茶と玉露という高級茶のみ栽培されます。
太陽の光線を寒冷紗でだんだんカットしていくことで
お茶の甘味が増すこと、
宇治川の朝霧が茶の生育に必要なことなどなど。
一心一葉という言葉も始めて聞きます。
茶葉にはやわらかい新芽も見えました。

京阪宇治駅に戻った一行は、
すぐ隣の『源氏物語』宇治十帖「東屋」の古跡を訪ねました。
東屋観音と呼ばれていますが、
もしかしたら大日如来かも、と講師。
なんていいお顔の仏さまでしょう。
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   宇治十帖「東屋」の古跡。東屋観音。見事な石像です。

ここで一行はお昼の休憩です。

午後、最初に立ち寄ったのは橋寺放生院。
歴史は古く、秦河勝が聖徳太子の
念持仏を祀る地蔵堂を建てたことに由来します。
ここで知られているのは、「宇治橋断碑」。
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覆われて何も見えない宇治橋断碑。見学料も期間も時間も
指定されています。

「多賀城碑」「多胡碑」とともに
日本三古碑のうちのひとつです。
元興寺の道登が
宇治川に橋を架けた出来事が刻まれています。
現在の石碑は境内から発掘された
上部三分の一に残りを復元して接合させたもの。
昔は誰でも拝見できたのですが、
今はお金を払わないと見ることはできません。
文化財は誰のものか、考えさせられる講師の話でした。

朝霧橋の近くに「離宮水」と書かれた湧き水がありました。
さすが茶どころ、石臼の形をしています。
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         湧き水「離宮水」 石臼形の水盤がユニーク。

名水桐原水と同じ水源だとか。

離宮水から少し戻り、さわらびの道沿いに鎮座する
又振神社で解説がありました。
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       「又振神社」での解説。小さい社の大きな歴史。

怨霊となった藤原忠文を祀る小さな社ですが、
「宇治十帖」にも登場し、
浮舟が歌にこの社の名を読み込み、
匂宮に宇治にいることを見破られる
重要な役どころを演じる社でもあります。
歴史上の出来事と小説の構想が出会い、
虚と実が交錯する舞台として現在も目の前にある。
それが宇治という歴史の町なのかもしれません、と講師。
胸に響きました。

宇治川の豊かな水量と
流れの急なことに驚きながらも楽しい散策です。
興聖寺へ向かいます。
京都には数少ない曹洞宗の古刹。
しかも道元によって建てられた
日本最初の曹洞宗寺院なのです。
参道は琴坂という宇治十二景の一つ。なかなかの坂道です。
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    春の桜、秋の紅葉、そして山吹の季節は最高の琴坂。

登り切ったところには
建仁寺竹田益州老師と
表千家即中斎宗匠が「抛筌」、
裏千家淡々斎宗匠が「謝茶」
と揮毫された茶筅塚が。
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             お茶、そして茶道との縁を示す茶筅塚。

興聖寺が建てられた場所は、
かつて宇治七名園のひとつであった
朝日茶園の跡なのです。
元のお仕事の関係で、お茶に関わる講師の話は
さすがに興味深いものがあります。

さて境内へ。
ここは観光寺院ではなく、
日々厳しい修行が続けられている僧堂(専門道場)です。
張り詰めた空気が境内に漂い、
掃き清められた清浄な空間で、
禅と茶に明るい講師の話は、
とても面白く、ためになります。
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         環境と修行が造り出す清浄な境内。興聖寺。

鐘楼、本堂、血天井、開山堂、禅堂など、
その場、その場での的確な説明がわかりやすいものでした。
それにしても日本では七福神の一人で、
福の神である大黒さんが
インドでは暗黒を司る怖い神様だったとは驚きました。
弁財天と毘沙門天とが一体となった三面大黒さん、
色鮮やかでしたね。
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               少々怖い雰囲気の三面大黒さん。

再び琴坂を下り、福寿園で休憩をとった一行は、
源氏物語に横川の僧都として登場する
恵心僧都源信が開いた恵心院へと向かいます。
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       宇治川を見下ろし、鳳凰堂を見晴るかす恵心院。

平安時代後期の十一面観音を本尊にもつこの古刹は、
光源氏の弟である八の宮が説法を聞きに訪れた
風情を感じさせる宇治川を見下ろす高台の景勝地にあり、
現ご住職の丹精された花畑が見る人の心を和ませます。
河津桜や三春滝桜も見事でした。

一行は本日のメインである宇治神社と宇治上神社へ。
宇治神社参道には「菟道」地名の由来となった
兎の手水鉢が参拝者を迎えてくれます。
周到に置かれた鏡が憎い演出ですね。
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       今年の初詣には大変な賑わいを見せた手水鉢。

宇治神社でのお話はとても深く、広く、
ここに書けるような内容ではありません。
ただ、上下一体といいながら
上社と下社で違う社殿の形や、
摂末社に祀られた祭神の違い、
祭礼のあり方や地域との結びつきなどから、
宇治神社は宇治上神社とではなく、
対岸の県神社との関係のなかで
考証されなければならないという話には説得力がありました。
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         桐原日桁宮跡を示す宇治神社拝殿「桐原殿」

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     宇治神社本殿。確かに宇治上神社と違う形ですね。

そして本日の目的地、
世界遺産の宇治上神社へ向かいました。
国宝の拝殿と本殿。
宇治七名水で唯一残る桐原水。
摂社の春日神社。
境内に点在する巨石の意味。
一つ一つが興味深い話の連続。
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              難しいけれど興味津々の話の連続。

おまけに末社の香椎社の前で話が始まるや、
それまでの雨模様が一転、温かい陽射しが注ぎ始めました。
まるで講師の熱い想いにお日様が応えたよう。
しかし、香坂皇子に忍熊皇子。
怨みをのんで死んだ仲哀天皇の正統な
皇位継承者を祀る社がどうしてないのか。
なぜここだけ神功皇后と武内宿禰を
祭神として並祀するのか。
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               神功皇后と武内宿禰を祀る香椎社

そして何よりも、独特の形態を示す本殿の
三社の配置と大きさに籠められた意味とは。
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     中殿だけが異様に小さく、屋根も独立する本殿内部

講師の話はまるで推理小説を読んでいるように
次々に転回していきます。座学と違い、
目の前にそれぞれのお社があるだけに迫力を感じます。
それにしても天皇家の秘密や祭神の話など、
知らないことがいっぱいあって本当に興味が尽きません。
次の平等院の時の、対岸の宇治散策が今から愉しみです。


 
 
 
 
 

“京都世界遺産現地案内会「宇治上神社界隈を歩く」” への1件の返信

  1. いつも大変お世話になっております。
    宇治でもまた子供共々お世話になりましてありがとうございました。
    東京の生活は徐々に落ち着きつつありますが、宇治での講座の頃は本当に憂鬱でしたので参加でき大変救われました。当日は一生懸命先生を追いかけ、夢中でお話を伺いました。
    活動報告もまた楽しく拝見しました。現地に参加された方も楽しめ、参加されなかった方も行きたくなる、そう存じます。写真もお上手です。
    まさにあっという間に一日が終わってしまいました。子供とも「平等院に行かないで宇治で一日過ごせるなんて・・。」と驚きました。(笑)
    そんなすばらしい講座にまた出席させていただけるよう日々励みたいと存じます。ありがとうございました。

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