清遊ブログ  辰歳はじめ 雪の朝に

新しい年が明け、初めての雪が降りました。
雪は吉兆のしるし。
ことしが佳き年となりますように願い、折々に再びブログを書かせていただきたいと思います。
相も変わらず拙いものですがご覧いただければ幸いです。

うっすら雪化粧した町の風景。
朝方はかなり降っていたようですが、だんだんやんできました。じきに融けてしまうかもしれません。
まずお山(比叡山)を見たいと思って出てきたのですが…。
北山通りを賀茂川に出て、加茂街道を南へ。
残念ながら曇っていて見えません。代わりに薄化粧した大文字山の姿が。これは京都に住んでいると馴染みの風景かもしれませんけれど。
CIMG2266.jpeg
やはりホームグラウンド?の大徳寺山内に戻って来ました(笑)。
高桐院の石畳。翠の松が雪を被って新年にふさわしい趣。
CIMG2274.JPG
CIMG2269.JPG
そういえば、お気づきかもしれませんが、このホームページの表紙デザインも高桐院の雪景色です。

北側に回って竹林を見上げるとしんとして澄んだ空気。
粉雪が舞っています。
耳を澄ますと鳥のさえずり。
風が吹いて竹がざわざわ鳴る音。
聞こえるのは自然の音だけです。
CIMG2275.JPG
向かい側の龍翔寺。龍翔寺は修行道場ですが、そのせいでしょうか、やはりピンと張りつめた空気を感じます。
CIMG2276.JPG
CIMG2279.JPG
ここはいつ来ても静かで清々しいところです。

大徳寺は龍宝山の山号を持ちますが、山内の塔頭も龍の名を冠するところがいくつかあります。
この龍翔寺もそうですし、龍光院、龍源院、龍泉庵なども。
大徳寺の近くの船岡山には東麓に大池があり、山の東端が池中に突き出し、それが海に浮かぶ大船のようであったところから船岡と呼ばれたと堤講師から教わりました。
その大池に棲む龍という意から大徳寺を龍宝山と名付けたのだそうです。

さて、新年も5日ともなれば町の中は日常の顔に戻っています。
CIMG2289.JPG
なにやら面白そうなものを見つけました。

CIMG2291.JPG
ここは堀川今出川の交差点。和菓子の鶴屋吉信さん。
表のディスプレイは「嵯峨面」と餅花のお飾りでした。
嵯峨面は十二支のお面が並んでいます。
(子、丑、)寅、卯…。
CIMG2298.JPG

ありました!辰…お隣は来年の干支・巳さんですね。
CIMG2299.JPG
午、未…。
CIMG2300.JPG
嵯峨釈迦堂(清涼寺)では古くから大念仏狂言が行われていますが、この大念仏狂言で使われる面を模して作られたのが嵯峨面だそうです。
江戸時代以降、厄除けや魔除けとして寺社の門前で売られていましたが、戦時中に完全に途絶え、復興したのが、初代藤原孚石氏。
赤鬼、青鬼、お多福、ひょっとこ、武悪面、不動明王などあり、それぞれに素朴で味わい深いものです。「張り子」といわれる手法で、古書をさばいて面型に張り込んで作られているのだそうです。
 餅花にも辰が飾られて、愉快そうに空中でゆらゆら踊っています。
CIMG2303.JPG
嵯峨面に誘われて広々した店内へ。
ウインドウを覗きこみ…いろいろと迷いながらも、辰()の意匠から主菓子と干菓子を選びました。
CIMG2310.JPG
主菓子のじょうよ饅頭は龍頭の宝船。
龍頭というと大沢の池、観月の風景を連想してしまいますが、宝船となるといっそう豪華ですね。
CIMG2336.JPG
お干菓子は辰車。かわいらしい辰です。
 
CIMG2329.JPG
こんなものもありました。この本店だけで販売されている「観世井」のお菓子。
CIMG2307.JPG

すぐ近くの西陣中央小学校に、足利義満から観阿弥清次が拝領したと伝わる屋敷地があり、観世水
(かんぜみず)と呼ばれる井戸跡があります。

この井戸の渦を巻いて湧く波紋が観世流の紋様である水巻模様のもとになったといわれ、井戸の脇にある観世稲荷社には観世龍王と一足稲荷が祀られています。
昨秋、紫野・西陣案内で訪ねたばかりですが、「観世井」のお菓子を見て思い出してしまいました。
この鶴屋吉信本店の前には「舟橋」の石碑が建っています。

CIMG2313.JPG
古くから舟橋と呼ばれ、堀川が氾濫すると舟をつないだところからそう呼ばれた由。
また「京町鑑」では足利尊氏の執事・高師直の邸があり、泉殿の下に舟橋をうかべて結構をつくしたのが地名になったと記されている等。
ご存じのとおり、なによりここは応仁の乱で西軍の山名宗全らの陣がおかれたところ。もう少し西に行くと今出川通りに「西陣」の碑が建っています。
またまたローカルなご紹介になってしまいました。
ローカルついでに、昨秋のご案内の折にはまだ咲いていませんでしたので、
妙蓮寺椿と、同じく妙蓮寺のお会式桜をご覧ください。
いずれも年末に撮ったものです。
 


CIMG2190.JPG
CIMG2187.JPG
CIMG2201.JPG
CIMG2202.JPG
すこし華やいだ気分になっていただけたでしょうか。
このブログでは季節の風景、風物といったものをご紹介したいと思っておりますが、どうなりますことやら…。
どうか気長にお付き合いください。それではまた。

        

謹賀新年

P1480406.jpeg
新年明けまして
おめでとうございます

平成二十四年 壬辰年の始まりです。
P1480539.jpeg
「龍」一字

皆様、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

昨年は未曾有の大災害に堤講師の大病と、
まさに逆風の一年となりました。
被災者の方々はまだ
言語に絶する困難と直面しておられますし
堤講師もまだ次の手術を控えています。

新玉の年の初めとはいえ、胸のうちは

深草の野辺の桜し心あらば
今年ばかりは墨染めに咲け 
上野岑雄


という歌の心境ではあります。

しかし、こんなときだからこそ下を向かず
前を向いて歩いて参りたいと思います。
その意味を込めて冒頭に
ある方の、茶碗と龍の大字
の写真を掲載しました。
この豊かな彩りに満ちた作品と
躍動感溢れる書を
是非心の隅にお留め頂ければ幸いです。

むかし見し救世観音のほほ笑みを
年の初めにかへりみまつる
 吉井勇
kojiyumel.jpg
救世観音(資料画像)

京都・清遊の会では、昨年活動を休止した分を取り返すべく
本年は精力的に催しを行っていきたいと思っています。

状況次第ではありますが、
本年は今月七日の堤講師の特別講座を皮切りに
中断していた世界遺産講座は三月から再開予定、
五月には大河ドラマにちなんで
清盛と中世芸能の世界

をテーマに堤講師と井上講師の対談と
井上講師による白拍子舞
さらには吉例の季節の和菓子講座も企画しています。

どうぞ、皆様には倍旧のご支援を賜り、一人でも多くの方が
ご参加下さいますよう、心よりお願い申し上げます。
P1360212.JPG
京都岡崎・須賀神社 手水鉢の龍