六道まいりへ

 

京のむし暑さも極まったかのような日、六道まいりをしました。

六道まいりとは、お盆のお精霊迎えの行事です。

京都では「おしょらいさん」と呼んでいますね。


夕方になっても日中の熱気は変わりなく…

鴨川の床の賑わいがうらやましくもありますが、
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松原橋を渡ります。

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五条大和大路を上がって、六波羅蜜寺の大萬燈会に。
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六波羅蜜寺は、平安時代の始め空也上人が開いたとされる真言宗智山派の寺院。

ご本尊は国宝・十一面観音。

西国三十三所観音霊場の第17番札所でもあります。

また空也上人像や平清盛像、地蔵菩薩像など名だたる仏像の数々でも知られるところ。
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今日の法要は「五大文字大萬燈点燈法要」

七難即滅・七福即生の祈願が修せられます。


法要にあたりご住職から「今年が1048回目の萬燈会となります…」とご挨拶がありました。

空也上人が963年(応和3年)この萬燈会を厳修したのが始まり。

記録が残り、確かに1048回と確認できるそうです…

千年脈々と続いてきた法要なんですね!気の遠くなるような歴史です。

幾多の戦乱をくぐり抜け今日ある寺の姿。畏敬の念を抱かずにはおれません。


本堂内陣お厨子の前、三つの大文字の灯芯に火が点じられ、法要が厳粛に営まれました。

萬燈会によって迎えられた精霊は、16日の大文字の送り火によって送られます。

法要のあと参詣者も共に般若心経を誦し、お焼香いたしました。

参詣の方々は灯された大文字にそれぞれの思いを託しお参りされたことでしょう。

本当にしみじみと心安まるご法要でした。

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六波羅蜜寺の本堂について少しお話しますと、

外陣には参詣者が座し、内陣にはいると一段低い土間になっていて、その向こうに本尊のお厨子があります。

僧侶方はその、外陣と本尊の間の下った位置、四半敷き土間で法要を勤められました。

つまり、ご本尊と参詣者は、土間をはさんで同じ高さということになります。


比叡山延暦寺根本中堂で見学したのと同じ形式です。

これは天台仏堂の建築の特色だそうですが、この六波羅蜜寺はいまは真言宗の寺院です。


なぜでしょうか?

歴史をひもとくと、この寺院がもと天台宗のお寺として開創されたことがわかりました。

なるほど!

さてこれより先の詳しい講義はいずれ先生にお願いすることにいたしましょう。

ちなみにお盆の15日には、ここ六波羅蜜寺では中堂寺六斎念仏が奉納されるそうです。


いよいよ足は六道の辻へ。

昔ここは葬送の地、鳥辺野への入口にあたり、ここで野辺の送りをされたことから、「この世」と「あの世」の境の辻と言われました。

写真は「六道の辻」の指標。
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西福寺にお参りします。
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西福寺は弘法大師が地蔵堂を建立し、自作の地蔵尊を納めたのが始まりとされます。

ここには「地獄絵図」とよばれる「六道十界図」や「檀林皇后九相図」があり、六道まいりの時期に公開されています。
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「六道」は、地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅(阿修羅)道・人道・天道の冥界のこと。

人は因果応報により、死後この六道を輪廻転生すると言われています。

絵には地獄の閻魔大王が裁判しているさま、地獄に落ちた人々の様子などがリアルに描かれています。


「檀林皇后九相図」の檀林皇后は、嵯峨に檀林寺を建立し、檀林皇后と呼ばれた嵯峨天皇の皇后・橘嘉智子のこと。

仏教に深く帰依していた皇后が、この世の無常を自ら示し、人々の仏心を呼び起こすため、死に臨んで、自分の亡骸は埋葬せずどこかの辻に打ち捨てよと遺言し、その遺骸が白骨化してゆく様子を描かせたと言われ、

その地が現在の「帷子の辻」(かたびらのつじ)とも、葬送のときこの辻の辺りで帷子が風に飛ばされ舞い降りたから帷子の辻の名がついたとも言われています。

ここ西福寺にも六波羅蜜寺にもお精霊さんをお迎えする迎え鐘があり、お参りする人は絶えません。
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さて、いよいよ六道珍皇寺へ。

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六道珍皇寺といえば、平安の昔、嵯峨天皇に仕えた小野篁(たかむら)が夜ごと冥界との行き来のため、本堂の裏庭にある井戸を入口として通っていた話は有名ですね。


境内を入って右手の閻魔堂は篁堂とも呼ばれ、小野篁立像と閻魔大王坐像が安置されています。

昼間は役人として朝廷に出仕し、夜は閻魔庁に勤めていた伝説ゆえ、閻魔さんと一緒に祀られていることが多く、千本えんま堂もしかり!(写真は六道珍皇寺パンフレットの小野篁像)
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この平安時代にはずせないスーパースター「小野篁」についてお話をしだすととっても長くなるので、今日は六道まいりについてお伝えいたします。

 

六道珍皇寺さんの参詣順路によりますと、

まず、山門を入り、参道で高野槇を求め、

(この高野槇の葉に乗ってご先祖さま=おしょらいさんが冥土から帰って来られるのだそうです。)
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次に、本堂で水塔婆に戒名俗名を書いていただきます。
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そして迎え鐘を撞き、
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水塔婆を線香で清め、境内の地蔵尊前で水回向をして塔婆を納めます。

先に求めた高野槇は持ち帰り、おしょらいさんとともに我が家へ里帰りとなります。
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毎年盂蘭盆会に精霊を迎えるための送り鐘は十万億土の冥土まで届くと信じられ、

その響きに応じてご先祖様がこの世に戻ってこられるのだとか。


その夜、迎え鐘はたいへんな長蛇の列ができていました!

おしょらいさんのラッシュアワーですね。


そして17日には納められた総ての水塔婆を以って盂蘭盆会の施餓鬼法要を修せられるのだそうです。

 

六道まいりの帰り路、五条坂の陶器まつりをそぞろ歩きました。

陶器神社と呼ばれる若宮八幡宮にも立ち寄り、今日のお参りを終えました。
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なにやら冥土へ吸い込まれそうな夜の六道まいりでしたが、

人々の篤い信仰にふれ、普段は忘れてしまっているご先祖を想いました。
あらためてお連れいただいた方、同道の方に感謝、感謝です…。

涼一滴

はや立秋を迎えました。
でも暑さはよりいっそう増す気配。今日の予想気温はなんと37℃!
秋へと変わりゆく季節の声をきくのはまだまだ先のようです。
今日ご紹介したいのは、「紫野源水」さんの「涼一滴」。
この猛烈な暑さの中、「涼一滴」と聞くだけで、爽やかな気分になります。不思議ですね。


紫野源水さんは北区北大路通り新町下ル、地下鉄「北大路」駅から西へ歩いて
10分ほど。
お店の前に植えられた大毛蓼の鮮やかな緑と
「京菓子司 紫野源水」の白い暖簾が涼しげです。


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一番のお目当ては白い煎茶茶碗に入った水ようかん。


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小豆風味とごま風味の二種。

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もうすぐ液体になる一歩手前のようなやわらかさ。

上品な小豆風味。胡麻の香ばしい風味。どちらも本当に美味!
瞬時に口の中で融けてしまう繊細な繊細なお味です。
「涼一滴」はたいせつに、傾けないようまっすぐに持ち帰りましたが、地方発送もしておられるのだそうです。
紫野源水さんは茶道の菓子などを調製されていますが、お店でも生菓子を求めることができます。
うかがった日にありました四種を。

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葛焼き「緑陰」

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                 きんとん「朝露」

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煉り切り「もらい水」

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錦玉「青楓」

「涼一滴」をいただいたあと…
「もらい水」のフォルムに見とれ、「緑陰」の緑色に見惚れ、「青楓」の感触を想像し、迷ったあげく
、「朝露」をいただきました。
うっとりするような美味しさで、紫野源水さんの、特にきんとんの大ファンになりました。
それから源水さんといえば銘菓「松の翠」。
大納言小豆にすり蜜をかけて、松の木に見立てた一口ようかん。
このやわらかさ、甘さは変わらぬ魅力です。

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銘菓「松の翠」 


「涼一滴」も生菓子も…蘊蓄もなにもいらない、ただただ美味しくて満足。
今日の素直な気持ちです。