7月11日(日) 和菓子をたのしむ会 ー京の夏によせてー
本格的な夏の到来にさきがけて、涼を呼ぶ和菓子の会を催しました。
会場は京都御所の近くにお店を構える、上生菓子のお店、甘楽 花子(かんらく はなご)さん。御主人の内藤豪剛(ひでたか)さんに生菓子を目の前でつくっていただき、賞味する趣向です。
お越しになったお客さまから順に、粟羊羹(あわようかん)と冷たいお抹茶が出されました。粟羊羹は寒天にもち米の一種、桜みじんこというものを加えてつくるお菓子。ひんやり、そしてもっちりした食感が口いっぱいに広がります。
みなさんが揃われたところで、まずはご主人の葛まんじゅうづくりから始まりました。
鍋を火にかけ、葛を溶かして練ります。みるみるうちにとろりとした葛の生地ができます。
次はまるめておいた餡玉をあざやかな手技で葛で包んでゆきます。
ひとつを包むのがあっというまです。
「どなたかやってみられませんか?」というご主人の呼びかけで何人かの方がチャレンジされました。なかなか楽しそう。
このほか、ご主人からは京菓子の老舗に育ち、身につけられた和菓子職人としての習い、夏の生菓子や葛まんじゅうの美味しいいただき方についてのお話しがありました。
葛まんじゅうが蒸しあがるのを待つ間、和菓子研究家の井上由理子さんにお話をお聴きします。この日は涼やかな絽の着物をお召しになっていました。
井上先生のお話のテーマは「涼」。
『枕草子』の一節をひいてのお話から始まりました。
「あてなるもの……削り氷にあまづら入れて……」
銀色の器にかき氷が運ばれてきました!
井上先生いわく「これがその再現に近いものです」
あまづらは、甘味料の役割。遠い昔、清少納言も好まれたのでした。
お話は、宮中の行事の六月朔日の氷室の節会(ひむろのせちえ)、晦日の夏越の祓(なごしのはらえ)へと移ります。
平安時代、氷室に貯蔵しておいた氷は大切に大切に、そして急いで運ばれ、朝廷に届けられました。
写真は「御所氷室」という氷室の氷をかたどった干菓子。邪気を払う意がこめられているのでしょうか、大納言小豆が入れ込んであります。
そういえば京都では、六月晦日はういろうに小豆をのせた「水無月」をいただきます。
そして夏越の祓は無事に夏が過ごせますようにと厄除けを願う日。
京都の神社では茅の輪くぐりの行事が伝わります。
京都・清遊の会でも30日には北野天満宮に詣り、茅の輪くぐりをしたばかりです。
こんどは水や氷をかたどった意匠のお干菓子がガラスの器に盛って出されました。
井上先生ご持参のお菓子です。
見ているだけで涼しい風が吹き抜けるようです。
観世水、光琳水、波、などなど。お話は菊水の井、染井、醒ヶ井など、京の名水にもおよびました。
ほかに鷺と葦や夕顔などデフォルメした夏の干菓子も見せていただきました。
さて、待望の葛まんじゅうが蒸し上がり、常温でそっと冷まされて出来上がってきました。
ギヤマンの器に盛られて翡翠のような色合い。
いちばんおいしい時をのがさずいただきます。
皆さん至福のひととき。こんどは熱いお煎茶かお抹茶で。
内藤さんから、中に入れる餡の色などによって菓銘も、「水牡丹」「夏木立」「藻の花」「玉取」……とさまざまになります、と教えていただきました。
話はなかなか尽きませんが、内藤さんと井上先生から心尽くしのおもてなしをいただいたような和菓子の会は、和やかな雰囲気のうちに終了いたしました。
ご参加の方からは早くも次回開催のリクエストをいただきました。
梅雨の蒸し暑い時期、しかも雨の日にもかかわらずご参加くださいました皆さま、ありがとうございました。
京都・清遊の会では、季節ごとに和菓子の会を開催しています。次回をどうぞお楽しみに。
ご参加をお待ちしています。